山川惣治について

今さらですが、ブログ説明欄以外に山川惣治について説明がぜんぜんないことに気づきました。
「絵物語?」「少年ケニヤ?」という人もいるでしょうし、そもそも私が展示会などという大それたことをやろうと思った経緯を書いておきます。

まず、山川惣治についてですが、主に昭和20~30年代に少年雑誌を中心に発表された「絵物語」というジャンルの作家です。「絵物語」は、絵と文章がだいたい同じ分量で、紙芝居がルーツです。紙芝居の「語り」を文章化して絵と並べたものと言ってもいいかもしれません(詳しい方、説明に不適当な部分があれば指摘してください)。絵のタッチはいわゆる劇画的・写実的なものがほとんどでした。絵物語作家には他にプラモデルの箱絵でも有名な小松崎茂などがいます。

山川惣治の代表作として『少年ケニヤ』や『少年王者』があります。『少年ケニヤ』は昭和26年から産経新聞に5年に渡り連載され、1984年にアニメ映画にもなったので作品名をご存知の方も多いかもしれません。物語の舞台はアフリカで、両親と生き別れた日本人の少年ワタルがマサイ族の酋長ゼガや白人の少女ケートと大冒険を繰り広げます。『少年王者』は戦前に紙芝居として人気を博し、戦後は『少年ケニヤ』よりも先に、少年誌に連載され大ヒットとなります。舞台は『少年ケニヤ』と同じくアフリカですが、当時すでにアメリカで映画がつくられていた『ターザン』の影響が強く、またエンターテイメント性に富んだ作品です。新聞と少年誌という媒体の違いもあって、両作品の絵のタッチはかなり違います。『少年王者』の方が細かく、かつダイナミックに描かれていて、とくに人や動物の動きの描写については山川作品の中でも高い評価がされています。『少年ケニヤ』は絵のサイズが小さく、線も簡略化されていますが、それが結果的にアフリカの荒々しい自然をうまく表現するのに適していたのかもしれません。ともかく、この2作品は当時の少年たちの心をとらえ、後の世代のマンガ家たちにも大きな影響を与えました。

山川惣治はその後も昭和40年代の前半まで絵物語にこだわって作品を書き続けますが、30年代からマンガの台頭におされ、全盛期は短い期間でした(といっても、マンガ家を含め、大ヒットを出しても全盛期が数年以下という作家も数多いと思いますが)。

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私が山川惣治を知ったのは少年ケニヤのアニメ映画の公開前後のことだったと思います。同居していた曾祖母の旧姓が山川なのですが、曾祖母から映画の原作者・山川惣治が遠い親戚だと聞かされました。ですがそれから長い間、単なる知識で止まっていて、興味を持ち始めたのは実は数年前のことです。そのころ、地元の郷土史などにも興味が出はじめており、生誕100年がまもなくと知って、がぜん調べてみたくなりました。それでも、最初は自己満足の域で済ませようという気でいたのですが、ちょうど調べ始めたころに縁があって知り合った橋本捨五郎氏に山川惣治について話をしたところ、強く背中を押され(笑)、展示会を開催しようと決心するに至りました。思い立ったものの、いまだに暗中模索の日々ですが、一人でも多くの人に山川惣治の作品に触れ、その面白さを感じてもらえれば幸いです。


2008年01月22日01:11 │Comments(0)山川惣治について
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